と。眉間にシワを寄せ、ノートと睨めっこをしていれば不意に声をかけられて、私は弾けるように顔を上げた。
すると視線の先に、帰り支度を済ませた不破さんが立っていて「あ……」と、思わず声が漏れる。
無駄に整った顔立ちと、相変わらず香る煙草の匂い。これは帰る前に、喫煙所で一服してきたのだろう。
……というか不破さん、まだ帰ってなかったんだ。
「不破さんこそ、今からお帰りですか。お疲れ様です」
「お疲れ様です、じゃないだろ。お前もたまには早く帰れ」
肌寒い夜。トレンチコートを羽織る不破さんは、眉根を寄せながら私を見下ろしている。
でも、早く帰れと言われても……
今週中には一度、向こうの担当者と打ち合わせをしなきゃいけないし、それまでにはなんとなく、カフェの方向性だけでも決めておきたい。



