「目は口ほどに物を言う、です」

「悪さ、できねぇなぁ」



私の誘導尋問に、呆気無く両手を上げた不破さんが、心底面白そうに笑った。

大好きな無邪気な笑顔に、胸がどうしようもないほど高鳴ってしまう。

この場面で高鳴らせている私も、大概だとは思うけど。

言葉で説明されるより、相手の一挙一動を見ているだけで伝わる気持ちもあるのだ。



「それなら俺も、言ってやれば良かったな」

「え?」

「社用の携帯電話。寄りにもよって他人の社用の携帯電話なんてお前が持ったら、そんなもの何より先に相手に返すに決まってんだろーが、って」

「……っ」

「あと、食事の件も。仕事として行くなら、上司的には何も言わないけどなぁ……」



グッ、と。再び引き寄せられた身体。

呼吸と呼吸のぶつかる距離で綺麗な顔に見つめられ思わず息を飲めば、鼻先をぶつけた彼が忌々しそうに眉根を寄せる。



「お前の男としては、絶対に行かせたくねぇ」

「な……っ、」

「お前も、そこのところ、よく覚えてから行動しろよ」



甘過ぎる命令は、間違いなく上司としてではなく、私の恋人としての言葉で、



「ああ、あと。その靴、よく似合ってる」



私の頭にポン、と優しく手を置いてからオフィスに戻っていった彼の言葉は……もう、どちらの彼のものなのかは、わからなかった。