「ありがとう、ございます……っ。でも、カフェの仕事が追い付いたら、ちゃんと通常業務もこなしますから、あと一週間だけ待っててくださいっ」

「ほんと、お前って呆れるくらい意地っ張りな」



涙を拭って顔を上げ、真っ直ぐに不破さんを見つめれば、不破さんはどこか呆れたような息を吐いてから小さく笑う。



「……負けず嫌いって言ってください」

「意地っ張り」

「…………。そういう自分は、さっきまで辰野さんにイライラしてたくせに」

「あ?」

「私が代わりに答えれば良かったですね。" 不破さんは打ち合わせで外に出てたんじゃなくて─── 煙草を買いに出てたんだ " 、って」



言いながら思い出すのは、スラックスのポケットに片手を入れて、疲れと苛立ちを表情に滲ませていた不破さんだ。

あれは私の仕事をやれるだけ早急に片付けたあと、煙草が切れていることに気付いて買いに出て帰ってきたところだったのだ。

片手の入っていたポケットの中にはきっと、買ったばかりの煙草が入っている。

吸ったあとかどうかは─── 強く煙草の香りが鼻を掠めたから、間違いなく、外で吸ってから戻ってきたのだろう。