「だ、誰かに見られたら、からかわれる……っ」

「いいじゃん、別に。そん時は、またフォローしてやる」

「フォローされてばかりじゃ嫌です……っ。い、今だって……オフィスに帰ったら、カフェ以外の案件全部、不破さんとカニさん、サルさんが代わりに進めてくれてるに違いないのに……っ」



そこまで言えば、不破さんが驚いたように私を見た。

それを真っ赤であろう目で仰ぎ見てから、子供のように唇を尖らせる。



「何、お前。すごいな、オフィスに監視カメラでもつけてんの?」

「だから……それくらい、わかります。何年、みんなと働いてると思ってるんですか? ずっとそばでみんなの仕事を見てたから、だから私は……自分のミスのせいでみんなの仕事を増やすことになってしまって……バカな自分が、情けなくて悔しくて、仕方ないんですっ」



この7年、誰よりもそばで見てきた。

だからこそ、ミスをした私がオフィスを出てから、不破さんがどういう行動に出たのかもわかってしまう。

私のカフェ以外の通常業務である仕事を全部取り上げて、カニさんとサルさん、そして自分に振り分けたに違いない。

そしてそれを快く引き受けてくれたであろう二人と─── きっと、誰よりも多く自分に仕事を廻した不破さんが、今、目の前にいる。