「仕事って、関わる人たちとの信頼関係で成り立つものだと僕は思っています」
そこまで言うと、辰野さんはコーヒーカップをソーサーに戻してから私を見て小さく微笑んだ。
今はその笑顔を見ているだけで、ズキズキと胸が痛んで、情けなくも泣きたくなる。
クライアントである辰野さんをはじめとしたカジタ商事の皆さん。カフェ案件に関わってくださる全ての人たち。
今回の仕事を任せてくれたassortの社長。未熟な私のフォローに廻ってくれているカニさんやサルさん、そして……不破さん。
全ての人たちが、それぞれに担う仕事があって、その中で支え合いながら仕事をしている。
全ての人たちの顔が、見えるわけではない。けれど、顔の見えない相手とだって仕事を通して繋がっているのだ。
そして、そんな私たちを繋いでいるのは目には見えない信頼という名の糸。
仕事を成功させるには必要不可欠なもので、何よりも大事にしなくてはいけないものだと私も思う。
『気付かなかった、で、済まされる話じゃないだろう』
思い出すと、ヒリヒリと胸が痛む。
不破さんが、あんなにも激昂した理由も、ほんの少し冷静になれた今ならわかるから。
信頼関係というものは、昨日今日で成り立つようなものではない。
常日頃から見えている、仕事に対する相手の姿勢や言動。不破さんをはじめとしたassortのスタッフや、社長とカジタ商事の梶田社長が今日まで築いてきた信頼関係があってこそ、今回の仕事だって任されたのだ。
だけど、そうやって長い年月を掛けて築いた信頼関係も、一瞬で崩れてしまうこともある。
『同じ名称のカフェがあるからといって、そこまで気にする必要はないと思います』
私が、何気なく発した一言。
もしもあれを、辰野さんだけでなくカジタ商事の皆さんの前で口にしていたらと思うとゾッとする。
私は本当に─── どうしようもない、バカだった。



