「私にできることがあれば、なんでもいたします。この度は、誠に申し訳ありませんでした……!」
相変わらず賑わう店内で、私はテーブルに額をつける勢いで頭を下げた。
本来であれば立って頭を下げた方が良いのだろうけれど、店内でそれをするのは辰野さんが悪目立ちしてしまって逆に迷惑だ。
「……日下部さん、顔を上げてください」
ほんの数分、何かを考え込むような間を空けて、まるでコーヒーの湯気のように穏やかな辰野さんの声が聞こえた。
誘われるようにゆっくりと顔を上げれば、そのタイミングでブレンドコーヒーが二つ運ばれてきて、コトン、という優しい音とともにテーブルの上へと置かれる。
「……確かに、事前に確認もされずにネームとロゴ案を提出されたのは軽率でしたね。もしも気付かずに進んでしまっていたら、取り返しのつかないことになっていたと思います」
「はい、本当に申し訳ありません……」
「それに、こういうミスの積み重ねが僕たちだけでなく、assortとカジタ商事が長年培ってきた信頼関係を崩す要因を作ることにもなります。こちらとしても、安心してお仕事ができる相手でないと、先行きが不安になるだけですから」
淡々と、それだけ言った辰野さんは目の前に置かれたコーヒーカップへと手を伸ばし、そっと口を付けた。
辰野さんの言葉が深く心に突き刺さる。
そう、これは私と辰野さんだけの信頼関係の問題ではないのだ。
私が何気なく犯したミスや失態が、assortとカジタ商事との信頼関係を崩す要因にもなり得るのだということ。



