イジワル上司に焦らされてます

 


一瞬、時間が止まったような錯覚に陥った。

手広く展開している、カフェチェーン。

頭の中で再度その言葉を繰り返すと、私はゴクリと喉を鳴らしてから、慌ててキーボードを叩いてブラウザを開いた。

逸る気持ちに急かされながら検索をかけてみれば、不破さんの言う通り。" カフェ・プラス " という名のチェーン店が引っ掛かってきた。

それに再びゴクリと息を呑む。

経営する会社は関西を中心に、カフェ以外の飲食事業でも実績を残している大手企業だ。ホームページにも、ズラリと関連店舗名が並んでいる。



「絶望的なのは、商標登録もされている名前だってこと」

「商標、登録……」

「ダメ元で、さっき商標登録確認の検索かけたんだよ。当たり前だけど、お前もそれくらいは理解してるよな? 既に商標登録されている名称が、簡単には利用できないってこと」

「……っ、」



今度こそ、目の前が真っ黒に染まった。

商標登録とは、その商標を独占的に使用することができる権利だ。

一度商標登録された商標は、ライセンス契約をして使用許諾を受けない限り、第三者が勝手に使用することはできない。

うっかり使用してしまった場合は商標を侵害しているということになり、使用の差し止めや、損害賠償を請求される可能性だってある。

当たり前だけど、既に特許庁に登録されている商標と同じもの、または似ているものは登録できない。それが競合店なら尚更だ。

つまり、どう転んでも " カフェ・プラス " という名称を使うことはできないってこと。

もし使ってしまった場合、将来本当にチェーン店展開が叶った時には間違いなく躓く要因になるし、下手したら訴えられることも有り得る。

そうなった時、カジタが被る損害は計り知れない。

そもそも、カジタ商事が将来チェーン店展開を考えているのに、既に商標登録された店舗名で進めていくなんて、そんな馬鹿な話はない。