イジワル上司に焦らされてます

 


不破さんの指摘に、返す言葉を失う。

今指摘されたのは、カフェ案件の一番最初の打ち合わせで、辰野さんが言っていたことだ。


『ウチとしては最終的に、カジタビル内のカフェを1号店として、結果次第で2号店以降の店舗を増やしていきたいという考えです』


忘れていたわけじゃない。もちろん、ディレクションをする上での根底に、その言葉はあった。

ただ、チェーン店展開も視野に入れているということを、下の順位に置いてしまっていただけ。

優先順位を考えれば、今は目の前の1号店を成功させることが先決だと思っていたし、辰野さんも言っていたとおり、1号店の成功なくしてチェーン店展開なんて夢のまた夢だろう。



「でも……同じ名称のカフェがあるからといって、そこまで気にする必要はないと思います」



一度だけ小さく息を吐き出して、眉間にシワを寄せている不破さんを前に、出来る限り冷静に言葉を紡いだ。



「……気にする必要、ない?」

「はい。たった今言いましたけど、こういう同じような店舗名って、個人経営のカフェではよくあるんです。私が行くカフェにも、同じ名前のお店もあります」



ただ、名称が同じだというだけで、コンセプトだって違うし中身も違えば、それは別物だ。

だから別に、そこまで気にする必要はないんじゃないかと思う。

確かに名称は同じだけれど、日本全国探してみたら店舗名が同じカフェなんて腐るほどあるはずだし、そこまで目くじらを立てて気にするようなことではない。



「ロゴも私が提案したものとは全く違いますし、店舗名だけが偶然同じでも、なんの支障もないはずで─── 」

「写真の方の " カフェ・プラス " は、関西では名の知れたチェーン店だ」

「え……?」

「その名前で検索かけてみろ。神戸だけじゃなく大阪や京都にも手広く展開しているカフェチェーンだって、すぐにわかる」