「言っとくけど、お前が挑発してきたせいだぞ」

「な……っ、挑発なんてしてません……!」

「ああ、そう。じゃあ、後ろの車の運転手に聞いてみるか?」



けれど、私の心情も見透かした上で、なんのこともないように言い放つ隣の上司。

うるさいくらいに高鳴る鼓動。これみよがしに、私たちを煽ってくる後ろの車。

到頭いたたまれなくなった私は、思わず視線を外へ逃がして、助手席の窓越しに不破さんを見つめた。

……窓越しに見ても、腹立たしいほどイイオトコ。


その横顔をぼんやりと眺めながら、私は今更になって混乱する頭の片隅で問いかけた。


ねぇ、私たちって、今、関係が変わったんですよね……?


だけど結局、そんなことも言葉にはできなくて。



「……あー、煙草吸いたい」



先程までよりもほんの少し乱暴な運転に、私は色んな意味でドキドキしながら身を預けるしかなかった。