「……っ!!」

「っ、」



突然、耳を劈くようなクラクションが辺り一帯に響いて、私たちは動きを止めた。

慌てて後ろを振り向けば、シルバーのコンパクトカーのライトが私たちを鋭く睨んでいる。

思わず不破さんの胸を押して離れると、目の前の信号が青く光っているのが目に入り、頭の中が冷水を浴びせられたように冷え切った。



「……チッ、」

「嘘っ、信号待ちだったんですか!?」

「ヤり始めた時には、後ろはいなかったけどな」



少しも悪びれることもせず、それだけ言うとギアに手を乗せアクセルを踏み込む不破さん。

そういう問題じゃないでしょ! というか、その言い方、語弊がある!

完全に他人事な運転手に、心の中で盛大にツッコミを入れた時には車が走りだしていた。

慌てて助手席のシートに身体を鎮めて両手を頬に当てれば、隣の運転手が見せつけるように溜め息を吐く。


ああ、もう……なんで気付かなかったんだろう。本当に私ってば、酔っぱらいにも程がある……


落ち着かない気持ちでバックミラーをチラリと覗くと、顔の見えない後ろの車の運転手に対して、申し訳なさと羞恥心ばかりが募った。