「不破さん……」

「おい、悪い女だな」



でも、そんなのとても、口に出来そうもなかった。

今更彼に、「一人の男性として、あなたが好きです」なんて、そんなこと言えるはずもないから。



「悪い女じゃなくて、ただの酔っぱらいです……」



言いながら、私はそっと、不破さんの耳に指先を這わせた。

撫でるように指に不破さんの柔らかい髪を乗せて、耳の後ろへと運ぶ。

そうすれば、一瞬だけ不破さんの身体がピクリと揺れて、今度は獰猛な男の色が彼の瞳に滲んだ。

それが嬉しくて、思わず小さく微笑めば、不破さんの手が自分を誘惑する私の手を捕まえる。



「……お前さぁ、まず先に、言うことあるだろ」

「嫌です、絶対言いたくない……」

「あのなぁ」



そう言って、呆れたような息を吐く不破さんの瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。

そうすれば、今度こそ不破さんが「部下のくせに生意気だな」と呟き、楽しそうに口角を上げる。



「あとになって、酔ってましたとか、バカなこと言うなよ」



再び、吸い寄せられるように近づいた唇。


……絶対言いません、そんなこと。


心の中で、そっと返事を返して目を閉じた。

けれど、そのまま唇と唇が重なって、再び深く繋がろうとした彼の首裏に、私が自然と腕を廻した─── 瞬間、