「やっぱり俺、お前の匂い、好き」
私の額に額をつけた不破さんが、そっと目を閉じてから、そんなことを言う。
近過ぎる距離に鼓動は高鳴るばかりで、近くで見ても綺麗すぎる顔立ちにそのまま見惚れた。
ゆっくりと持ち上がった瞼。再び目が合えば、情けないくらいに胸がギュッと締め付けられる。
─── この7年、私は不破さんと、上司と部下という関係を守り続けてきた。
もちろんその間、不破さんが私のことを女として見てくれているなんて、一度足りとも感じたことはなかった。
それでも……不破さんが私のことを、部下として大切に思ってくれていたのは身に沁みるほど知っている。
どんな時でも、不破さんは私を部下として指導し、時には厳しい言葉も掛け、一(イチ)デザイナーとしてモノになるように導いてきてくれた。
そんな、尊敬する上司との関係が変わるなんて、考えただけで頭が痛くなるのも当然だ。
そんなこと、考えるだけで怖くなった。
……不破さんとの関係に、少しでもヒビが入ってしまうのが怖かったんだ。
不破さんが隣にいるのは当たり前過ぎて、不破さんがいなくなることは、考えられなくて……
「……蘭、俺を見ろ」
─── ああ、なんだ。
私、不破さんのことが、好きなんだ。



