「仕事に必要な携帯は、お前は絶対、忘れないだろ」
そう言って、優しく目を細めた不破さんは、再びPCの画面へ視線を落とすと、カチカチとマウスを鳴らしながらキーボードを叩く。
静寂に囲まれた空間で、不破さんの存在を全身で感じる。
ほんのりと薫る煙草の苦い香りは不破さんのもので、なんだかそれだけで胸が安心感に包まれた。
聞き慣れた、キーボードを叩く音がやけに私の心に染み込んで、何故だか無性に嬉しくて。
……不破さんが、そばにいる。
その事実と、コツコツと時間を刻む時計の針の音に誘われるように、ゆっくりと……
ゆっくりと、歩を進めた私は自身のデスクの前で足を止めると、目的の引き出しを無造作に開けた。
「あったか?」
「……ありました」
「そりゃ良かった」なんて。
至極適当な返事をする不破さんは、本当にいつも通りで嫌になる。



