「で?」
「……え?」
「忘れたのは、携帯か財布か」
けれど、落ち込む私とは裏腹に、淡々と言葉を紡ぐ不破さんは突然耳を疑うようなことを言い出した。
「……ああ、携帯はないか。ってことは、財布はデスクん中か?」
「…………」
「まさか、珍しく飲んで酔っ払って、この時間に財布の在り処がわからないとか言うなよ」
呆れ半分、溜め息混じりにそう言った不破さんは、マウス片手にPC画面を眺めたまま顎で私のデスクを差す。
その仕草にも一瞬見惚れて、再び慌てて思考を戻した私は戸惑いながら彼を見た。
……なんで。
「なんで、わかったんですか……?」
「は?」
「わ、私が、携帯じゃなくて財布を忘れたって……」
呆然としたまま声をかければ、ゆっくりと顔を上げた彼と視線と視線がぶつかった。
それと同時に、イジワルに弧を描いた唇は、今から何を言うつもりなのか……
不本意にも胸がドキドキと高鳴って、うるさくて仕方がない。



