「……完全に、飲み過ぎた」



フラフラと覚束ない足取りで、夜の23時に会社まで戻らなきゃいけないなんて最悪としか言いようがない。


散々マキと飲んだくれ、いざお会計……という時に、私は自分が財布を持っていないことに気が付いた。


「蘭、アンタ、私の結婚を祝う気ゼロでしょ」


そう言うマキの言葉は、ごもっともだ。

各言う私は、お会計を済ませてくれる親友の横で財布の在り処をアルコールに浸った頭の中で必死に探した。



「どこに忘れたのか、思い出した?」

「思い出した……」



……間違いない、オフィスの、デスクの引き出しの中だ。


お昼にビル内の自販機で飲み物を買って、引き出しの中にしまいこんで、そのまま……

留めとばかりに突きつけられた自分の馬鹿さ加減に、気持ち良く酔っていた心は一気に現実へと引き戻される。


「今度は、ランチ奢ってよね」


その上、そう言って肩を叩く親友は、落ち込む私を見てやっぱり楽しそうに笑うと、呆気無く改札の向こうへ消えていった。