ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

桐島課長はストローから口を離し、唇を閉じて幸せそうに口角をあげていた。

「やっぱりいいね」

桐島課長はやわらかな表情をつくり、じっとわたしを見据えている。

心の中までも深く入り込んでいるような目力にじっと耐えられなかった。

「えっ」

ごまかすように半分残るアイスコーヒーをすするけれど、すぐにむせてしまう。

大丈夫かな、と首を傾げている桐島課長を焦らせてしまった。

大丈夫です、と一言いって咳をして何とか喉を整えた。

「こうやって本の話をするとき、星野くんの目が輝いているっていうか」

「そうですかね」

せっかく体内温度が下がったと思ったら、また体の熱が急上昇している。

桐島課長はさっきからずっとわたしから視線をはずそうとはしなかった。

「あ、そうそう。星野くんにはいろいろお礼いいたくてね。特にこの間のデータ処理の件は」

「あ、あれはわたしも昔やったことがあって。牧田先輩がフォローしてくれたので助かったんですけど」

「牧田もあんなにイキリたたなくてもいいのにな」

そういうと、桐島課長は軽く思い出し笑いをした。

見たことがない、せつなそうな顔に不安がよぎる。

「……牧田先輩と何かありましたか?」

「牧田と? 何て?」

桐島課長はわたしから視線を下へとはずすと、少しだけ顔を曇らせた。

何か隠してるんだろうか。

「最近になって親しくしてるっていうか」

「そうみえるだけだよ」

桐島課長は強調してみせた。

果たして、そうだろうか。

桐島課長をわざと避けるような行動をとっていたくせに。