ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

以前、桐島課長といった喫茶店へ足を運ぶ。

日曜の夕方前ということで買い物の帰りだったり、暑さを避けるためにきたと思われるお客でいっぱいだった。

幸い、入り口に近い場所に飴色の4人席用のテーブルがひとつ空いていたのでそこへ通された。

桐島課長はわたしを奥のビロードの赤いソファ席に座らせてくれて、桐島課長自身はわたしが腰掛けるタイミングを見計らい、向かいの木製の椅子に腰掛ける。

しばらくして白いエプロン姿に白いシャツの上に黒のベスト、黒のタイトスカート姿の女性が注文に訪れた。

桐島課長はアイスティー、わたしはアイスコーヒーを注文した。

注文をし終えてすぐに桐島課長が体を少しだけ前のめりにさせて話しかけてきた。

「そういえばね、二階堂月彦の最新作、読んでみたよ」

桐島課長のメガネからみえるこげ茶色の瞳がうっとりするぐらいきれいだ。

休日仕様の桐島課長をまた拝めるのはありがたい。

「ホントですか」

「なかなか面白いんだ。男が主人公なんだけど、恋愛相談稼業をすることになってね、そこで相談相手の女の子と……とこれ以上いうとネタバレになっちゃうからやめておくね」

二階堂さん、そんな小説書いていたとは。

恋愛相談稼業っておもっきり二階堂さんがやっていることじゃない。

「面白そうですね」

不安にさせないように笑顔でかえすと、桐島課長もうれしそうに笑いかけてくれた。

「貸すよ。よかったら」

「ありがとうございます」

話のちょうどいい切れ目に注文をとった女性の店員がグラスになみなみと注がれたアイスティーとアイスコーヒーが運ばれた。

ストローを入れて口をつける。冷たさの中にコーヒーの酸味と苦味が相まって暑さがすっと消えてなくなるような気がする。

コーヒーの味に酔いしれていると、桐島課長もアイスティーを満足そうに飲んでいた。