ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

月星書房をあとにして、駅方面へと足を進めていた。

日差しを避けるべく、商店街のアーケードを抜けて商業施設のあるビルへと向かって信号待ちをしているところだった。

「星野くん」

後ろから聞きなれた声がした。

振り返ると、白いリネンの半袖シャツに灰色のチノパン、前髪をおろしたラフな姿の桐島課長が藍色のビニール袋を手に提げてこちらへ歩いてきた。

「桐島課長」

「買い物か、何かかな」

ちらちらとわたしの顔をしきりにみている。

黒いTシャツにジーンズ姿ともう少しおしゃれをしてくればよかったな、と後悔した。

気がつけば信号機が青を示したので桐島課長と一緒に渡る。

「え、ええ。桐島課長は?」

「俺は本屋へ用事があって」

そういって、藍色のビニール袋を掲げた。ビニール袋には有名書店の名前が白くプリントされていた。

「そうなんですね」

「時間よかったらこれから以前いった喫茶店でもどう? おごるよ」

「え、おごるだなんて。……わたしでよかったら」

わたしの言葉に桐島課長は明るい表情を見せてくれた。

「よかった。断られると思った」

「断るだなんて。逆にわたしがいったら断られるんじゃないかって」

「どうして? 遠慮しなくてもいいのに。まだ会社の堅さが残ってるのかな」

と、桐島課長は眉をひそめている。

そんな桐島課長をみたらなんだかかわいらしく思えて笑ってしまった。

「笑ったな。星野くんの笑った顔、直にみたの、初めてかも。ほっとしたよ」

桐島課長から褒め言葉もらえるとは思えず、わたしの体内温度は一気に急上昇した。