しばらくいろいろと考えすぎて眠れなかった。

今まで恋のようなものをしてきたし、たくさん失恋っぽいことはしたけれど、それでもその日はぐっすり寝ていたのに。

幻の本と呼ばれるものを手に入れたのが一番嬉しいはずなのに、古本市で桐島課長に出会うし、月星書房で恋愛コンシェルジュマスターの紹介を受けるし。

でも恋愛コンシェルジュマスターっていってもチラシに書いてあるだけだから、信ぴょう性に欠けるけど。

日曜日、もしかしたら桐島課長と鉢合わせしたらどうしよう、なんていう変な悩みをかかえながら過ごしていた。

結局会うこともなく、日曜はすぎていったんだけど。

せっかく買った二階堂重彦の本も集中して読めなかった。

月曜になって普段通りの時間帯に出勤する。

マンションの廊下に出て、桐島課長の住むドアに差し掛かる。

もしかしてここで会ったりして。

なんて、まんがみたいなこと、起こるはずもないか。

遅刻してはいけないから、エレベーターに乗り込み、会社まで早歩きで向かう。

もう職場へいってしまったんだろうな。

桐島課長と一緒に会社にいけたらどんな風になっちゃうんだろう。

って、わたし、桐島課長のことしか考えてないじゃない。

やっぱり、これって、恋っていうものなのかな。

信号待ちをしていたとき、スーツを着こなした素敵な紳士のサラリーマンをみて、あたかも桐島課長がそこにいるような気持ちになって胸がざわついた。