ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

未発表の作品なんて、二階堂重彦の本であったかな。

買った本をカバンに詰め込み、古本市から少し離れてスマホでネット検索してみたけれど、どこにもそんなこと書かれていない。

あの店員、わざとそんなことをいって変なセミナーに引っ張ろうという魂胆なんだろうか。

さっきの店員に反論したところで何が起こるわけでもないし、それよりも読みたかった本が手に入れられたんだからもういいか、と自分をなだめていた。

他のブースも眺めて帰ろうとしていたところ、

「星野くん」

桐島課長がわたしのところへ駆け寄ってきてくれた。

「桐島課長。もう帰ったと思っていたんですけど」

「いろいろみてまわりたくてね。星野くん、よかったらこれからどうかな」

茶色のフレームからのぞく瞳がまっすぐできれいだ。

落ち着いた低い声に胸が一瞬高鳴った。

って、ちょ、ちょっと、桐島課長に誘われてるけど、わたし。

「い、いいんですか?」

「僕はこの通り一人だけど、もしかして星野くんはこれから彼氏と待ち合わせ?」

「そ、そんなことないですよ。彼氏がいたら一人でここへは」

桐島課長に余計なことをいってしまった、と思って慌てて口をふさいだ。

「変なことを言わせてしまってすまなかったね。星野くんがよければご一緒願おうと思って」

「お、お願いします」

「そんな堅苦しくなくていいから」

そういって桐島課長のはにかむ姿も素敵だった。