ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

ようやく休みがやってきた。

朝、いつもより1時間ばかりゆっくり起きてから電車に揺られ終点のターミナル駅に降り立つ。

駅前の広場ではすでに古本市が行われていた。

すでにお客さんが詰めかけていて、通路を行き来するひとたちでごった返していた。

月星書房っていう本屋さんが出ているはずなんだけど。

フリーマーケットのように、フリースペースに各店舗が軒を連ねる中、隅っこのほうに異彩を放っている箇所があった。

他の店舗はでかでかと店舗名が掲げられて、黄色や赤でわかりやすい手作りポップをつくってお店の雰囲気やどの本を強みにして売り出しているかをアピールしていた。

が、一店舗だけ、ただ金網のワゴンの棚に古書をならべ、本の奥には出店者と思われる男性が退屈そうに簡易椅子に座っていた。

他の古本屋にはない独特の雰囲気をかもしだしている。

開催場所のひとがこしらえた白い紙に黒字で印字されたものをワゴンの脇にビニールテープでとめただけで、そこには月星書房の名が記されていた。

無造作に差し込まれたワゴンの棚をじっくり目を凝らして探してみる。

子供の絵本や一般書籍、古い雑誌や脚本、地図帳や昔のアイドル本までジャンル分けなんか何もせず、ただ放り込んだだけのような本の山の中にわたしの求めているあの本に出会えるだろうか。

多くの本の中で埋もれるように見慣れた文庫の背表紙が見えた。

色あせた青色の背表紙に白色で『苦い恋の始め方』と著書名である二階堂重彦氏の文字が。

これはわたしが求めていた、あの本じゃあ。

とろうと他の本を引っ張り出そうとしたとき、横から大きな手が支えてくれて、無事、文庫本を引っこ抜くことに成功した。

顔をあげ、その人にお礼を言おうとした。