ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

「星野くん、ちょっといいかな」

午後の休憩が終わり、仕事の準備を行っていた。

「お、またご指名ですね」

と、染谷さんが化粧直しを完璧にして席に戻っている。

茶化さないでよ、と染谷さんの背中をぽんと軽く叩くと、染谷さんは同情めいて軽く笑っていた。

「昨年は数字のいれ方が半角と全角が混じっていて、どうして一昨年は全角のみで違っているんだろう? 統一したほうがいい。ちゃんとやらないと困るだろう」

机に並べて比較していて、どうにも気持ち悪かったのか、いろいろと赤い文字を入れてきた。

きっちりと性格に仕上げたいらしい。

「それは、生産管理課のデータがそうなっていて」

「でも結果は総務課が出すものだろう。だったら今年からしっかりやったほうがいい」

「わかりました。相談します」

一応マニュアルのリーダーは牧田先輩なのに、どうしてわたしにばかり指示を出すのだろう。

二度手間だけど、しかたなく、資料をもって牧田先輩に提案する。

「どうしましょう、牧田先輩」

「そんなことで目くじらたてなくても、外部に出す代物でもあるまいし。まあ課長のいう通りにしないと気にすまないだろうから、直しながら仕上げるか」

と、牧田先輩は呆れていた。

それよりも普段なら物静かに軽く怒るはずの牧田先輩なのに、そのことに関しては饒舌できっちりと反論していることに驚いた。

細かいことが気になってしかたがないのか、データを流し込んでも、もう一度やりなおしてほしいといわれて何度も直しを行う。

たいていスケジュール通りに進めるところを少しずつ日程がずれ始めてきている。

いつしか桐島課長のことをカタブツ課長といった妙なあだ名をつけて呼ぶおじさんたちも増えていった。