ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

桐島課長がきて一週間が過ぎ、マニュアル作りが本格的にスタートした。

といっても例年どおりのスケジュールなので特に気を引き締めることもなく、データを流し込んで確認する作業に没頭している。

桐島課長に関しては財務にいった元課長にいろいろと引き継ぎをしながら自らもマニュアル作りに参加している。

時折視線がかち合うこともあるけれど、目が合えば営業スマイルに会釈と決まり切った社交辞令を交えて接するぐらいで特別気にもとめなかった。

お昼になって食堂へ向かい、食べはじめているところでいつものように他の課のおじさんから分け与えられたデザートを大事そうに運んできた染谷さんが空いている向かいの席に座ってきた。

「星野センパイ、呼び出しされまくってますね」

「いや、そうじゃないけど。マニュアルの件でわたしにいろいろ聞いてくるだけで」

牧田先輩に聞けば一番的確なんだけど、課長はそれでも事あるごとにわたしを指名してくる。

「そうなんですか? でも素敵ですよねー、課長」

「え?」

出た。染谷さんのおやじキラーな面が。

今日の食堂のデザートはオレンジゼリーなのだが、それを幸せそうな顔を浮かべながらちまちまとスプーンですくって染谷さんは食べている。

「渋くてかっこいいじゃないですかー」

「そうかな……」

隣に座る食べ終えてお茶をすすっていた牧田先輩は何も言わずただあんまりいい顔をしていなかった。