ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

「ここの本社の中を案内してもらえないかな」

「えっ、それだけですか?」

「それだけ」

切羽詰まったこの気持ちを返してくれよ。

全身に力を込めていたせいか、一気に力が抜けて足元がふらつきそうになった。

やれやれと近くにある本社の案内図が入った本を取り出す。ざっと部屋の説明をしておいた。

「会議室は同じ階で、これはここが今いる書庫で、総務関係の資料全般が入っています。機能的なのは工場なので詳しいことは工場のある生産管理課へ聞いてください」

「ありがとう。助かったよ」

そういうと桐島課長はニコッと笑って書庫から出ていってしまった。

迫ってきているだなんて、勝手に思ってしまったわたしはバカなのか。

ここまでいくと妄想がひどくなりそうで困る。

それでも一瞬、どきんと胸がときめいてしまった。

あんなかっこいい課長だからきっと素敵な彼女がいるんだろうな。

ああ、まったくまた身勝手な妄想がはじまった。

これ以上書庫でぼんやりしていたら牧田先輩に叱られる。

急いで資料をとり、総務課へと戻っていった。

桐島課長はすでに席に戻り、仕事を進めていた。

総務の奥の棚に鍵を返して席に戻ると、桐島課長はわたしに視線を送っていたので、軽く会釈をしておいた。