ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

大崎さんに挨拶をして、生産機械設備課をあとにした。

少し時間が経ったけれど、まだ会社の中に星彦さんがいるかもしれない。

総務のあるビルに戻り、階段をあがろうとしたところ、上の階段の踊り場に星彦さんがカバンを持って立っていた。

「総務によっていったら、星野さんがいないからどうしたのかって、桐島課長に聞いたら工場のほうへ行ったっていうからもう会えないかと思ったけど」

「二階堂さん」

星彦さんは階段をゆっくり降りてわたしの目の前に立つ。

「もう会わないって思ってたのに」

「そうなんですか?」

わたしの言葉に星彦さんはくすっと軽めに笑った。

「いなくなって、さびしいんだ」

「そんなことないですけど、急だったから、少し寂しいというか」

星彦さんが桐島課長とわたしの仲をかき混ぜてくれたことでおかげで付き合うことになった。

強引すぎる性格だけど、どこか憎めない感じがした。

「そういってもらえるだけで僕の存在価値はあるってよくわかったよ」

そういって余裕をもたせながら笑うのは、月彦さんにも当てはまるなあと思いながらみていた。

「二階堂さん、これからどうするんですか?」

「僕はここの作業が終わったら別の会社で次の仕事が待ってる。これでも依頼があれば全国各地を回って忙しいんだよ」

「じゃあ、もしかして今回はわたしのところに?」

「考えすぎだって。僕は僕の仕事をしたまでだから」

自信たっぷりに星彦さんは答えてくれた。

星彦さんとの出会いも別れも、ただの偶然なんだよな、とどこか引っかかりがあるけれど、そう思うしかないか、と自分を諭した。