ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

椅子から大崎さんの姿を通り越して、生産機械設備課のいる席を見渡す。

星彦さんの姿が見当たらなかった。

「あの、そういえば、二階堂さんは」

「あいつか。あいつ、派遣だったのって知らなかったっけ」

「派遣だったんですか?」

「システム構築で短期間だけの契約なんだ。今日はすべてのチェックが終了して今さっき退社したけど」

今日までって聞いていたけれど、午前で業務終了していただなんて。

「……本当ですか」

「工場内で挨拶してからだから、まだ社内にはいるんじゃないかな」

「わ、わかりました」

「二階堂くんも奈々実ちゃんのこと気にかけてたし、奈々実ちゃん、モテモテだね」

気にかけてくれていたんだろうか。

確かに星彦さんが非常階段でけしかけなければ、桐島課長から積極的に誘うことはなかったけれど。

「もー、冗談はよしてくださいよ」

わたしもごまかすように笑うしかなかった。

「マニュアルも終わったし、また来年になるね」

「はい。そうなりますね」

「その頃にはもう結婚して桐島奈々実になっちゃってたりして」

「ちょ、ちょっと早いですって」

昨年もマニュアルが完成したときも大崎さんから軽い冗談をお見舞いされたこともあったけれど、これでマニュアル製作も終わったんだな、と今年も大崎さんの冗談を聞けることができてよかった。

それよりも頭の片隅には星彦さんの姿があった。