ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

お昼になって社内食堂へ向かおうとしても、後を追うように来ていた月彦さんの姿がなかった。

いつも通り、一人で社内食堂へ向かい、定食を頬張ってから非常階段へ向かった。

「お疲れ様」

まぶしい太陽の光とともに目に飛び込んでくるのは、いつもの位置に座り、のんびりとお茶を飲んでいた桐島課長だった。

「き、昨日はどうも」

「ああ。昨日は星野くんのことばかり考えてしまって眠れなかった」

「……わたしもです」

「今日は来ないみたいだね、二階堂くん」

「そうみたいですね」

「もしかしてまだ彼のこと、思ってるの?」

「そんなことありませんっ!」

二階堂さんのことを思っているだなんてこれっぽっちもないのに、桐島課長のむすっとした顔をみていじらしく感じた。

「これ以上俺から星野くんを取ろうと思わないでほしいな」

「……桐島課長」

桐島課長は腰を上げ、階段を降りて踊り場にいるわたしの目の前までやってきた。

「ここの秘密基地は封鎖するの?」

「会社から苦情が出たらやめますけど、息抜きとしてここを利用させてもらいたいんですけど」

「じゃあ、俺も付き合わせてもらうよ。それよりも星野くんが嫌じゃなければお昼一緒に食事をしたいんだけど」

さっきまで真面目な顔をみせて仕事していた桐島課長が照れくさそうに話すのをみて、かわいらしい人だな、と思った。

「桐島課長がいいっていうなら」

そういうと、桐島課長はいろんなお店をみつけないといけないなあ、とすでにあれこれと考えてくれていた。

欄干に腕をもたれながら二人並んでカラッとした夏の風を浴びる。

夏の空気に触れてそういえば染谷さんが夏休みのこと、話していたっけ。

「もうじき、夏休みですね」

「そうだね。どこへいこうか」

「ま、まだデートもしていないのに」

「早めに予約しなくちゃ。今度の週末のデートで一緒に決めよう」

「は、はいっ!」

まだ先のことなのに、次の予定が埋まっていく。

桐島課長とつくる楽しみが一つ増えた。