ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

別れを惜しむといってもお隣さんなので、現実に戻って自分の部屋へと戻った。

まさか桐島課長とおつきあいができるだなんて。

夢をみているようだった。

一刻も早く、月彦さんに報告しなくては、という気持ちの方があせり、レポートの文章もかなり雑だった。

【よく頑張りましたね。お疲れ様でした。あとは週末デートになるんですね。もう邪魔されるようなことはないでしょうから、安心してデートしてください。デートのレポート、楽しみにしていますよ。】

月彦さんからのメールは業務的な感じだったけれど、それでも近くに応援してくれていると思っただけでここまで頑張れてこれて、本当によかった。

次の日、普通通りに出社したつもりだったけれど、どうやら一人は勘付いていたみたいだ。

「星野センパイ〜」

更衣室に入るなり、待ち構えていたのは染谷さんだった。

「昨日とちょっと違うんじゃないんですかー。ひょっとして課長と何かありました?」

「な、ないって。どうしてそんなこというのっ」

染谷さんは目を細めて、それからすぐにニヤリと笑った。

「だって帰り際、珍しく課長が星野センパイに話しかけて、それから牧田センパイが血相変えて総務から出ていったんで、どうかしたかと思ったんですけど」

「何もなかったよ。仕事のことだし」

やっぱり染谷さんの女の勘は相当なものだな、と感心しながら、制服に着替えた。

カバンからブラシを取り出し、ロッカーの扉の裏にある小さな鏡に自分の顔をうつし、髪の毛を整える。

「そうですかー。いいですよねー。そういう恋って憧れますよねー。夏季休暇が近づくっていうのに、早く彼氏欲しいですよー。星野センパイ、二階堂さん紹介してくださいよっ」

「だからあの人のこと、よく知らないし」

「え? 知らないんですか? 今日で業務終了っていうこと」

「え、そうなの?」

髪の毛を整えていたブラシの手が止まる。

星彦さん、今日で仕事終了なんだ。