ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

桐島課長は申し訳なさそうに顔を下に向けている。

わたしのことが好きだからわたしを求めてきているってわかるけれど、まだ心の準備ができてなかった。

「……ごめんな」

「いえ。初めてだったので、つい声を荒げてしまって」

「いいんだ。こっちこそ、つい止められなくてな」

「……はい」

「悪かった。つい衝動的になってしまう。反省しなくては」

「は、反省しないでください」

わたしはとっさに桐島課長の上着の裾をつかんだ。

「大丈夫。こんなことで嫌いにならない」

桐島課長はわたしに笑顔をみせ、スーツの裾をつかんだ手をぎゅっと握って、すぐに離すとその手で頭をやさしくなでてくれた。

「逆に嫌いになったかと思ったよ」

「いろいろ教えてくださいっ」

「大丈夫。教えてあげる。今度の週末、デートしよう」

「は、はい」

「これからは好きな人と一緒にいられるってわかっただけで仕事頑張れるよ」

「わ、わたしもです」

こういうときはどうしたらいいんだろう。

月彦さんに相談する間もなく、ここまで来てしまったし。

そういえば、以前読んだ本のなかに、主人公の女の子からキスをして、デートの約束をするみたいなこと、あったっけ。

「桐島課長……」

「ん?」

勇気を振り絞って顔を近づけると、そっと桐島課長へくちづけをした。

少し驚いた表情だったので、恥ずかしくなってすぐに唇を離した。

「星野くんからキスしてくれるなんて。なるほど、二階堂重彦の作品にあったね」

「マネしたくなっちゃいまして。週末楽しみにしています」

「困ったな。早く週末にならないかって仕事にならないかもしれない」

そういって桐島課長はぎゅっとわたしを抱きしめてくれた。