ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

玄関にカバンを残したまま、桐島課長に手をとられ、部屋の奥へと連れられる。

カーテンからのぞく薄明かりのなか、ようやく桐島課長の大きな手が離れると、真っ暗な部屋のなかで桐島課長に抱きすくめられた。

「抱きしめたかった」

そこまでわたしを欲してくれていたとは思わなかった。

スーツ越しだけれど、桐島課長がわたしに対して好きであるという意思が伝わる。

慣れない手つきで桐島課長の体に手を回す。

思った以上に背が広いし、がっしりしているんだと確認できた。

嬉しいです、とつぶやこうと顔をあげたとき、桐島課長は顔を近づけキスをした。

気がつけばベッドの上に寝転がされ、組み敷かれていた。

一気に幸せな気分から不安な気分へと気持ちがふくらんでいく。

熱いくちづけをかわし、ようやく唇から離れると、やさしく耳にキスをして、首筋へと這っていく。

桐島課長の手がシャツのボタンにかかったときだった。

急に怖くなり、桐島課長をはねよけようと体を精一杯よじった。

「や、やめて」

「……どうして」

熱い息から甘く色めくような声で桐島課長は発した。

「だから、わたしは」

これ以上言えない。

拒みたくない気持ちがあるけれど、それ以上のことは初めてだからどう自分で気持ちを処理していいか、よくわからなかった。

「そっか。そういうことか」

「ご、ごめんなさい」

そういうと、桐島課長はわたしから体を離し、ベッドの縁に腰掛けた。

わたしには未知の世界だ。確かに本だったりネットだったりのいわゆるかじった程度だ。

それ以降のモザイクの向こう側はみたこともない。

そんな状況でわたしは無事に課長と付き合えるんだろうか。