ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

桐島課長は、はあ、と気の抜けた声をあげている。

「牧田こそどうしてここに来るんだよ」

「だって星野さんが書庫の鍵持ったまま帰ってこないし。それに桐島だって」

「で、どうかした?」

桐島課長は面倒くさそうに返事をしていた。

「で、中にいるんでしょ? 星野さん」

書庫に牧田先輩の声が響き渡る。

わたしを呼ぶ牧田先輩の冷たい声に導かれるように、しぶしぶ入り口へと向かった。

無言のまま、桐島課長の右隣に立ち尽くす。

牧田先輩は腰に両手を添えながら、鋭い目つきでわたしをにらんでいる。

「……牧田先輩」

「あたしの気持ち、いったよね? それなのに、抜け駆けってやつ?」

「抜け駆け? どういうことだ?」

わたしが説明しようと口を開きかけた途端、また睨んで口を閉ざした。

「あたしは桐島のことが好きなの。新入社員で一緒に同期として肩を並べたときから」

同期だからわかりあえることだってある。

桐島課長の今までをわたしは知らないけれど、牧田先輩は知っている。

そんな強みを持つ牧田先輩に太刀打ちできそうにもない。

あんなに楽しそうに顔を向き合いながら話している桐島課長と牧田先輩の姿をみせられては、どんなにわたしが桐島課長のことを好きでも牧田先輩への思いのほうが強いんだろうな。

気持ちが急に冷え切って下を向いたとき、桐島課長が右手でポンポンと背中を叩いてくれた。

「困るなあ。勝手にそんなこと言われても」

と、桐島課長は顔を歪ませている。

さっきわたしにみせた苦渋にも似た顔を。