ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

ジリジリと桐島課長が近づいてくる。

わたしも桐島課長の歩数に合わせて後ずさりした。

「今まで下手にしてきたけれど、もうやめるよ」

声色がいつもよりも低く、怒っているように聞こえる。

もうやめる、って、桐島課長はずっと気持ちを隠していたってことなの?

「星野くんをみてるだけで冷静になれない自分がいるんだって気づいたからね」

書庫の行き止まりまできてしまった。

さすがに桐島課長の脇をすり抜けたいけれど、中央に置かれた大きなテーブルが邪魔をしている。

これは冗談なんかじゃないな、と察知したけれど、気持ちを切り替えるために軽く声をあげて笑ってみた。

無反応なことはわかっていたけれど、少しでも気がまぎれるならいいかなぐらいに思い、さらに冗談を重ねる。

「桐島課長、それより必要な資料、教えてください」

「そうだな。星野くんのマニュアルはどこにあるか、教えてくれないか?」

「……わたしのマニュアル、で言ったって」

そんなマニュアルがあればわたしも欲しいぐらいだ。

ただでさえ自分でもどう動いていいのかわからないぐらいだから、二階堂さんにお願いしたんだから。

「教えてもらいたいもんだよ。それよりもマニュアルなしで自発的に知る方法しかないのかな」

ぐいっと手をひっぱり、桐島課長はわたしの体を引き寄せる。

大きな体にすっぽり包まれる。

そのままテーブルの上にわたしの背中を押しつけた。

「き、桐島、課長、やっ……」

桐島課長はわたしに覆いかぶさり体重をかけてくる。

顔をあげようとしたとき、桐島課長の唇がわたしの唇を覆い尽くした。

首を左右に動かしてもどこまでも唇は追いかけ、唇を離してはくれなかった。

どうしてこんなところでキスするなんて。

こんなの桐島課長じゃない。