ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

二階堂さんは満足そうにわたしのほうを向いて目を細め微笑んでいる。

桐島課長が去ってほっとしているのだろうか。

「二階堂さん、どうしてついてきたんですか」

「だって、さっさとご飯食べて出て行くから気になってね。ここが星野さんにとっての秘密基地みたいなところだったんだ」

「秘密基地って」

確かに息抜きのために今までひとりで非常階段の扉を開けて外を眺めていた。

気がつけば桐島課長が加わって昼休みだけの秘密の時間を過ごしてきたけれど。

「桐島課長も一緒だったとはね」

わたしの気持ちを見透かしたように星彦さんは言葉にした。

「別にいいでしょ」

「そうやってこそこそ二人で会ってるなんてね。うらやましいな」

「誰かにいうつもり? まさか染谷とか」

「いわないよ。いったとしても何もメリットはないし」

そういって、星彦さんはフッと軽く笑った。

「動きを確かめるにはちょうどいいし」

「動きって?」

「星野さんを知るため、かな?」

すました表情の星彦さんがますます二階堂月彦さんの姿と重なる。

「あのもしかして小説家の二階堂月彦さんと何か関係があったりします?」

「誰それ?」

「……いえ、関係なければそれで」

「へえ、そのひとのことが気になってるんだ」

「気になってないの。ただその人にあなたが似てるだけで」

「それで親密になれるなら幸せだな。あ、もうこんな時間だ。お昼休みってあっという間だね。また昼休みに」

といって、笑みをこぼしながら、手を振って非常階段の扉を開けて中へ入っていった。

静まり返る非常階段の踊り場でひとり、立ち尽くす。

まさかこんな場所に二人の男性がいたのかと、乾いた風を感じながらわたしも扉を開けて中へ戻った。