ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

いつもの厳しい顔つきの牧田先輩が真剣に恋する女の顔をのぞかせていた。

仕事もたぶん私生活もサバサバしていると思っていたけれど、恋愛に対してはわたしと同様にうまくこなせていないんだ、と少しだけ同情してしまう。

「近づくもなにも仕事での付き合いだけですから」

そう言わせたいというオーラがみえている。

ただ口先だけでいっただけだ。

それをみて安心したのか、牧田先輩はまだ手をとめてたたみかけるように話を続ける。

「そうだよね。でも妙に親しげな感じがするのよ。星野さんと桐島」

「そうですかね」

わたしは棚に残された仕事の続きをした。

それなのに珍しく牧田先輩は仕事もせずに話しかけ続けてきた。

「前にも忠告したよね?」

「ええ、まあ」

「ねえ、どういうことかわかってない?」

「牧田先輩、もしかして」

「桐島とやり直そうかな、て思って」

ネチャっとした甘ったるい言い方に、ボールペンの束を持って数を数えていたのだが、手元が狂いそうになる。

やり直す、って。

やっぱり桐島課長となにかあったのか。

部署からの必要個数の載ったプリントとボールペンの束を見比べていたが、牧田先輩に顔をむける。

「……桐島課長と付き合ってたんですか?」

「付き合う寸前までいってたんだけどね。でも東京へいったとたんフェイドアウトしちゃったけど」

牧田先輩は目を輝かせ余裕をみせている。

「そうなんですか……」

「染谷さんと星野さんが桐島と仲良くしてるのみて、そういう人だったんだってようやく気づいた」

あんなにやさしそうに話す桐島課長のこと、何にも思っていなかったなんて。

逆にわたしとのやりとりをみて牧田先輩は自分の恋に自信をもつようになったってことなのか。

「しゃべってみると意外に面白いやつなんだなって」

牧田先輩は照れたのをごまかすように笑っている。

「ごめんね。こんなこと言えるの、星野さんだけなんだ。染谷さんにいったらきっといろんな人に広まっちゃって、肝心の桐島にも伝わっちゃったらせっかくの自分の段取りが台無しになりかねないからさ」