ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

ビールによってほどよく濡れたちょうどいい厚さの唇がわたしの唇を覆い尽くす。

苦い味が口に広がっている。

わたし、課長とキス……してる。

そんなバカな。

まだ好きだって告白してないのに。

桐島課長はゆっくりと慎重に唇を重ねている。

こんな優しいキスははじめてだった。

はじめてキスしたときは何がなんだかわからない、唇に何か衝突したような、味気ないキスだった。

唇を重ねていくにつれ、頭がぼんやりとしてくる。

最初は軽く体を寄せていたのが、少しずつきつく抱き寄せるようになった。

わたしの背中に両手を添えていたはずが、次第に腰のあたりまで手がおりてきている。

それ以上のことの事態をおこしたくなく、精一杯力をこめて、桐島課長へ体を退けるように抵抗をして、ようやく唇が離れた。

「これで君のなかの本にひとつ、事実として刻まれたかな」

クスっといたずらな目をしながら笑う桐島課長に対して怒る気にもなれなかった。

だけど、告白もしてないのに、キスしたことの事実を受け止められない。

「……桐島課長。わたし、告白……」

桐島課長はわたしの言葉に耳を貸さず、そばにあるベッドの上へ転がるように横になって寝てしまった。

どうしよう。

さすがに一人で寝かせてこの部屋を出ても無施錠になっちゃうし。

まいったな。

しばらく桐島課長の顔をみた。

とても満足そうに寝息をたてている。

わたしも桐島課長の寝姿をみたら眠くなってしまった。

床に腰を下ろすと、ベッドサイドに体を傾けた。