ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

無事にマンション棟へとつき、自宅の部屋のドアの前へと到着した。

「今日はありがとうございました」

何度お礼をいっても足りないぐらいだった。

それを聞いて桐島課長はコホンと小さく咳払いして、鍵を開けていた。

「……本貸したいんだけど、寄っていかないか?」

「えっ、でも」

堂々とした口ぶりに驚いてあやうくカバンから鍵を廊下に落としそうになる。

「よかったらどうぞ」

ずっとドアを開けている。

さすがに断りにくい空気を感じ、しぶしぶ中へと入った。

同じ間取りだから、この奥がリビング兼寝室ということもわかっている。

二人がけの椅子とテーブルの上には読んだと思われる二階堂月彦著作の本が乗っていた。

まだ荷ほどきを終えていないダンボールが山積みになっていたが、本棚には二階堂作品で埋め尽くされていた。

わたしは座ってと流されるままに椅子に腰掛けていると、台所へ向かい、冷蔵庫を開ける音がした。

「よかったらどうぞ」

と、テーブルの上に缶ビールを2缶置いた。

「喉乾いたでしょ。よかった飲んで」

桐島課長はプルタブを開け、喉を鳴らしていた。

わたしもつきあうようにプルタブを開け、いただきますとつぶやき、ビールを口にする。

暑かった体がビールの冷たさによりクールダウンできた。

「課長、そういえばお酒……」

「ん? ああ」

気がつけば桐島課長はわたしのそばに立っていた。

顔を見上げてみたら、うつろな目をしている。

その視線から逃れられなくなり、立ち上がった瞬間、腕を引っ張られ、体を桐島課長へと引き寄せられた。

桐島課長の顔が近い。

こんなに近くで桐島課長を見られるなんて、夢のようだ。

「桐島課長、どうかされましたか」

わたしが話しかけたそのときだった。