ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

元カレが消えていったことを確認すると、

「あ、ごめん」

桐島課長は握っていた手首をパッとほどいた。

「すみません。彼女だなんて嘘ついてくださって」

嘘という部分を強調していう。

こんなわたしのために嘘をついてくれたんだから、お礼を言わないと。

「嘘、か。まあいいか。男に連れていかれなくてよかった」

そういって桐島課長は苦笑いしていた。

「本当に何ていっていいやら……」

「運命を語るとはね。偶然会っただけなのに」

「本当にそうですよね。失礼なやつですよね」

「悔しいね」

「どういうことでしょう」

「俺に会う前の星野くんのことを知ってるんだから」

芯を持った言葉に胸を打つ。

わたしが答えに困っていると、

「気を取り直して帰ろうか」

と、桐島課長は穏やかに促してくれた。

はい、と話すと安心したのか、桐島課長もわたしを見て、うん、とやさしく頷いてくれた。

酔っ払いの集団をかわしながら、私鉄の始発駅にたどり着き、電車を待つ列に並んでいると、すぐに電車が駅舎に滑り込んできた。

並ぶひとの後を追うように、電車に乗り込む。

ちょうど二人分の席が空いていたのでわたしが座ると、桐島課長は隣の席に座った。

横に並んで座ったときに、少しだけ間を空けてくれた。

それでも体の熱が伝わり、一緒に歩いたときよりも距離が縮まって恥ずかしくなって終点まで眠ったふりをした。