ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

「またごちそうになってしまって」

桐島課長はわたしの分まで会計を済ませてくれた。

「いいんだよ。データ処理のお礼。実は染谷さんにも声をかけようと思ったけど、かけそびれてね」

「そうでしたか」

そうだよね。

結局は仕事の件があるからこうやって誘ってくれたわけだし。

ただ上司が部下にごはんをおごってくれた、それだけなのに。

「さて帰ろう」

「はい」

駅ビルからわたしたちの乗る私鉄の駅へと足を進めていった。

二人でこうやって土曜の夜の時間を共有していることだけでも最初に比べたら充分二人の仲が進歩していったと評価してもいいよね。

土曜の夜ということもあり、ターミナル駅から降り立つひと、またターミナル駅から出発するひとたちが絶え間なく行き交っていた。

駅のコンコースから駅の出口に出て、私鉄の駅に向かうため連絡橋を渡る。

そういえば、連絡橋の欄干の隅で泣いていたんだったと思いながら桐島課長と歩いていると、後ろから奈々実、奈々実と気安く呼び止める男の声が近づいてきた。

「お! 奈々実~。ちょうどいいところにいるじゃん」

「……なによ」

「これからさ、遊ばない?」

「彼女はどうしたのよ。彼女は! どうしてこんなところにいるの!」

「オレのこと冷めたんだって。急に寂しくなってさ、休みつかって地元に戻って昔の仲間と飲んできたところなんだけどさー。奈々実のこと思ってたらこうやって偶然出会えるなんて。運命かもな、オレたち。やっぱりオレには奈々実しかいないんだよー。な? どうせひとりなんだろ。遊んでやるからさ」

どうせひとり、ってどういうこと。

お酒を飲んでいるのか、饒舌に話す元カレに対して何も言い返せない。