ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜

「いいお店だね。誰かと一緒に来たりしてるの?」

「友人の女の子とですけどね」

疑っているのかいたずらな目をしてわたしをみていたけれど、もう一度女の子とですから、と念をおしたらわかってくれたらしい。

茶色のメニューの本を手にとり、適当に料理を頼む。

「桐島課長、お酒、どうします?」

「休みだからもらうよ」

料理と一緒にビールを頼むと桐島課長も同じようにビールを注文していた。

周りをみてみると、土曜の夜ということもあり、カップルの姿が多い。

わたしたちも他のひとからみたらカップルの部類にみられるんだろうか。

「雰囲気があって、いいお店だね」

「ここに入るならもう少しおしゃれすればよかった」

「十分、素敵だよ、星野くんは」

そういって桐島課長はさっそく運ばれてきたビールに手をのばした。

「喫茶店でコーヒーごちそうになってすみません」

「俺がおごりたかったし。久々に喫茶店にきたかったし。星野くんと。偶然の出会いに乾杯」

「……乾杯」

あわててビールグラスに手をのばし、桐島課長の持つビールグラスを傾け、こぼしそうになるところをギリギリキープさせてグラスを口に運ぶ。

きりっとした喉越しとともにすっきりした苦味が少しだけ緊張で乾いた喉にぴったりだった。

おいしい湯気をまといながら、料理が次々に運ばれてきた。

特製ハンバーグにナポリタン。エビフライにチキングリル。

平凡な料理だけれど、老舗らしい飽きのこないやさしい味にわたしも桐島課長も舌鼓をうつ。

「桐島課長こそ、素敵だと思いますよ。きれいな女性が寄ってきそう」

「勝手な妄想だね」

「うらやましいですよ。桐島課長に見初められたら幸せなんだろうな」

何、いってるんだろう、わたし。

そんなに飲んでいないはずなのに、酔っ払っちゃったのかな。

「そういわれるとは思わなかったな。こんな俺になんか、全然くっついてこないよ。それよりも星野くんはひとりで歩いていたら男の人、ほっとけないんじゃないかな」

「やだ、なにいってるんですか」

そういってわたしは声を高らかにあげて笑った。

これぐらいの冗談でこれぐらいの距離が心地いいんだ。

少しずつだけでも近づいていけば。