~side 柳也~

梨乃と一緒の昼食を食べ終わり手持ちぶさたになる。

梨乃はまだカレーを食べている。

こいつ食うの遅いんだよな。

食うのが遅いくせしてよく喋る。

麺類に関しては目もあてられないくらい遅い。

昔、梨乃が学食でラーメンを頼んだことがあった。

こいつがあまりに食うのが遅くて麺が伸びに伸びきって、見ているこっちが気持ち悪くなったことがあったから、あれ以来こいつが麺類を頼むことを禁止している。

「昼休みが終わる前には食べきれよ」

「そんなのわかってるよ」


・・・正直、昔から梨乃はけっこううざかった。

うざいし、おせっかいだし、たまによくわからないこと言い出す。

何よりもノリが悪い。

俺の渾身のギャグをスルーしたりするのはいつものこと。

なんでこんなのと長年、幼馴染なんてやっていけているのかが正直不思議でならない。

梨乃に「お前はうざい」と直接言ったことは何度もある。

それでも梨乃は「幼馴染ってこんなもんだよ?」と謎の発言をぬかす。

たぶんそれは何かの本の受け売りなのだろうけれど。

何の影響なのかを詳しく聞くとあいつの説明が長そうだったので今までずっと華麗にスルーした。

こいつはすぐに本やテレビの影響を受けるから間違った知識の塊だ。


俺がこいつのことをこんなにうざいと思っているのに周りの人間からは仲むつまじく見えるらしいから不思議で仕方ない。

クラスの人間からは仲むつまじく見えるがゆえに俺は綺麗な彼女がいて、さらに面倒見の良い幼馴染までいる許しがたい奴というレッテルを貼られている。

綺麗な彼女というのはまぁ認めるが面倒見が良い幼馴染というのは全力で否定したい。

正直クラスの奴等の冷たい視線は耐え難い・・・

俺、何か悪いことした?
そうこう考えているとやっと梨乃がカレーライスを完食するところだった。

昼休み終了まで後5分、食べるのが遅い梨乃にしては頑張った方だと思う。