▼14 脳筋魔術師
轟音がした。
それは窓ガラスを振動させるというか、びりびりとする。
「え、あ、なに!?」
ベッドで微睡んでいた私は一気に体を起こした。あたりを見渡し、様子を見るべくカーテンに近づく。パジャマのままそっと窓を覗いた。って、あれ?
アッシュだ。
だが、アッシュと取っ組み合い(?)をしてるのは同じ竜。深緑の、ややアッシュより小さい竜だが、あんな大きな竜が敷地内で取っ組みたいしていればそりゃあどしんどしん鳴るだろう。
というか、何故?
窓から顔を引っ込め、一息。時計を見るとまだ早い。
眠いが、着替えて様子を見に行った方がいい。ということで身だしなみを整える。シンプルなズボン。スカートもはくが、散歩したりアッシュと戯れるならズボンのほうが楽なのである。
今日はフェルゼンが邸にいるはず。もしかしたらフェルゼンかもしれない、などと玄関に向かうと、二匹の竜は今度はやや離れた場所に低空飛行していた。そして空に舞い上がる。
「おはようございます、カオル様」
「おはようございます。あの、あれ…」
玄関にはシエスがいた。
「坊っちゃんのご友人がいらっしゃいまして、戯れてるのですよ。音で目が覚めてしまったのでしょう?」
「ええ…。ということはアッシュにフェルゼンさんが?」
「ええ。困ったものですねぇ。庭がえぐれてしまって。あとで直して貰いましょう―――カオル様、朝食をご用意しますよ」
あの二人は放っておいても平気です、とばっさり。
後ろ髪ひかれながら、私は朝食を頂く。ニーナの話だと「魔術師だそうですが…」と。魔術師、か。カシェルではないようだが、あんなに轟音(破壊音、ともいえる)がしてるのにウジェニーもシエスも平気そうなのが不思議である。