控えめなドレス(これで…)と、留め具の凝ったデザインの低いヒール靴は歩きやすさを重視したもの。

 化粧もまたいかにもというものではないか、化粧をあまりしてなかった私からすると変わるものだなぁと鏡を見ながら思った。
 お洒落した私は照れ臭かったのだが、「似合っている」と言われて撃沈。


 フェルゼンはというと、彼もまた品のいい格好である。外套に、ブーツ。腰には実用的な剣が下がる。銀の髪の毛は纏められていて、どっからどう見ても貴族であった。
 私はというと馬子にも衣装。悲しいかな。



 で、問題なのは移動だ。

 まさかアッシュに、と思った私にフェルゼンが悪どく笑う。


 スカートなので跨げない。そのためちょっと変わった鞍に付け替え、私を横に座らせて飛んだ。
 腰に手を回されたが、不安と恐怖感は消えない。よってフェルゼンの首に手を回す状態で飛んだのである。飛ぶと街まではあっという間だが、私からしたらもう、喋れないし景色云々の問題ではない。



 街は巨大である。
 道幅が広いのと建物が巨大だったりと大きいのには竜が関係している。

 移動に竜を使うことがあるこの国らしく、竜の停留場があるのだ。大きさ制限があるとかなんとかあるらしいが、ゆっくり降り立つと係りにフェルゼンがアッシュを預ける。私はというと、必死に踏ん張る。この距離でもふらふらしてしまう。
 
 やはり慣れなくてはならないだろうが…暫くは難しいだろう。


 係りに馬車を呼んで貰うと、街中まで送ってもらう。
 窓から見えるのは、巨大な建造物ら。しかも細かい彫刻も見えるし、魔術なのか浮いた彫刻(?)もある。空には竜の影。



「すごい…」



 馬車から降りると、圧巻だ。人も多い。
やはりこの世界はファンタジーだ、と思う。
 大きな剣を背中に背負っていたり、いかにも魔術師だろう、長いローブに杖という姿の人。

 道は馬車が走りやすいよう整備され、兵士が歩く。若い女性らが談笑しながら歩く。
 全てが大きく立派なのに、窮屈さはない。それぞれがある程度距離や調和がうまくされているからだろう。


 慣れていない私は何となく居たたまれないが、「どうだ?」とフェルゼンの言葉に我に返る。