フェルゼンは邸に戻ってもまあまあ忙しい。邸には護衛として何人かいて、庭先で剣ふるっていることもある。休みだからといって鍛練は怠らないらしい。
 が、団長としてビシッと決めた姿とは一変、ラフな格好をしていることが多い。
 いわく「疲れる」だとか。


 私も私で、ウジェニーとニーナが結託して着せ替えさせられることがしばしば。

 私自身、地球ではズボンの方が多かったのでスカートは何だか照れ臭くてならない。いや、スカートっていうか、ドレスだ。しかも凝ったデザインの。
 どのくらいのお金が…だなんて考えると恐ろしい。よって、私も何か役に立たなくてはと出来ることをしようと思っている。

 私が出来ることなんてたかが知れてるけど。



「だいぶ慣れたようだな」



 フェルゼンの言葉に頷く。

 スフォルにきて、最初は本当ガチガチだったが、今はだいぶ慣れた。ウジェニーらも優しいし、フェルゼンもまた気にかけてくれているお陰だ。素直に笑えることも増えた。
 


「来週はカシェルは来ないから、空いているな」

「え?まあ、そうですけど」

「え」

「なんだ、嫌か」

「嫌じゃないですけど…その、大丈夫かなと」

「うん?とって食われることはないから安心しろ。たとえ迷子になっても」

「ならないようにエスコートするのが紳士なはずなんですがねぇ…」




 御手紙ですよ、とシエスがフェルゼンに手紙を渡しながらもらす。責められたようなそれに視線をずらして、手紙を開く。

 その表情がなんとも言えないものになったのだが、何かあったのだろうか?



「ウジェニーとニーナ、来週はカオルを着飾ってやってくれ」

「かしこまりました」

「勿論。皆が振り向くようなレディにしますわ」

「レディ…」



 ―――その言葉の通り。

 その日の朝早く、うとうとした私は満面の笑顔のウジェニーとニーナを見た。

 うとうと気分のままでいたそれに、ウジェニーが引っ張り出してきたドレスを見て目が覚めた。え、嘘。それ着るの!?と。