▼13 街へおでかけ
「いつまでふくれてるんだ」
足に力が入らないため、私は現在身動きが取れないまま長椅子に座っている。
気を聞かせたウジェニーが靴を脱がせてそのままま長椅子に足を預けているという、些か行儀悪いと思う格好なのだが、仕方がない。
誰のせいかといったら、あの人だ。
「フェルゼンさん、途中かなり楽しんでたでしょう。私が必死だったっていうのに」
「何だ、ばれてたのか」
「後ろで笑い堪えてるのがバレバレでしたよ!」
アッシュに乗せられ、邸の近くを飛行してきたのだが。
私は慣れない飛行に足腰が使い物にならなくなり、身動きがとれなくなった。
アッシュから降りたものの、その降り方がずるり、という感じだったのでフェルゼンに笑われた。
何とかしようとするものの、力が入らないので立てない。生まれたての小鹿か、というような感じである。
恨めしげにフェルゼンを見ていたが、私はどうすることもできず、結果フェルゼンに抱き抱えられて戻ることになった。
そんな状態で邸に戻ったらウジェニーとシエスが何事かと慌てるのは仕方ないだろう。
勿論説明はしたし、「坊っちゃん、カオル様は乗ったことなかったのですから!」とウジェニーがフェルゼンに説教(?)をし終えた今、向かいに座るフェルゼンは着替えてラフな格好をしている。
私はというとまず休もうということで、お茶をもらっている。
「だが、移動に竜を使うことを考えると慣れておいた方がいいだろう」
「だとしても、いきなりすぎます」
ニーナがお茶のおかわりをくれる。フェルゼンは菓子に手伸ばす。
今更だが、フェルゼンは甘いものは嫌いじゃないらしい。邸には大抵お菓子があり、誘惑に負けそうになるのは秘密だ。
「景色はよかったと思うが」
「……見る余裕があったと思いますか」
「悪かった。次は加減する」
お陰で尻が…などとは言えず、面白がっているフェルゼンに口を閉じる。