「僕はぼこぼこだし、複数のやつ相手にしたフェルゼンもそりゃ酷いものだし。僕は僕でフェルゼンの家にきてここ何処だよ状態だったしねぇ…懐かしいなぁ」
「それから友達に?」
「そ。小さい頃は落ちこぼれだったけど、魔術師としての才能があるのを見つけたのはフェルゼンともいえるね。へなちょこな僕をぎたぎたにしながら鍛えてたし」
「ぎたぎた…」
「で、それを僕の親は笑って見てたというカオス」
「……」
「へなちょこで内気でっていう僕だったからねぇ。今の僕があるのはフェルゼンのおかげってわけさ。こんなこといったらフェルゼンは嫌がるけど」
昔から面倒見がいいのか、と思う。
この国に来てからというものの、フェルゼンは自らあれこれ手を打ったという。もちろんそこにはカシェルも関わっている。
私がスフォルの者であるという証もまた彼らが手続きしてくれたのである。そして、邸では衣服や身の回りのものはすべて用意してくれている。
戻ってきたばかりは忙しいであっただろうに、必ず顔を見せた。今でも家に戻らないことは何日かあるが、必ず戻ってくる。
「さてさて、じゃあ勉強という名の遊びをしよう」
ウインクしたカシェルに、私は頷く。
力があることが発覚した今、私は学ぶことで必死だ。この力がどう影響して、どう使えるかわからない。カシェルは努力と個性次第で変わるというそれは、ただの日本人であった私には難しい。集中力が必要だし、少し凍らせたりするだけで力が抜けるような感覚になる。
カシェルが私に行った術は、私の中に眠っていた力を目覚めさせた。が、それは今まで使えなかったのを、やや強引に使えるようにしたようなものらしく、まだ体は慣れていないために脱力感や疲労があるのは仕方ないという。
力を使えば、体に響くのだ。
簡単な魔術でも疲れるのは、まだ慣れていないだけ。
徐々にやっていけば慣れるし、使える範囲も広がるそうだが、今のところはやはり無理をせず楽しみながらが一番だという。
閉鎖的な場所でしばらく生活してきた私にとって、毎日がまだ少しだけ重いのだ。それをカシェルはわかっている。だから無理はさせないし、魔術といっても雑談も多い。
ある程度やると、カシェルは再び城の方へと戻る。忙しい合間にきてくれているのため、私も集中して頑張っていた。

