「僕は一旦城に戻るけど、君たちはそのままフェルゼンの家に行くのかい?」
「ああ。帰国の件は出してあるし、家にも連絡は入っているはずだ。問題なかろう」
「あー、なら僕の方で手回ししておくよ。びっちりばっちり」
「まるで悪役だな」
「悪役だったからね―――ということでカオル。近いうち会いに行くから、その時力のあれこれを話そう。ニーナもだけど、今はきっかりさっぱり寝て食べて休むんだよ?フェルゼンに遠慮はしないでさ」
「お前がいうのか、お前が」
「遠慮させるつもりなのー?うわー」
「殴られたいか」
「あとはさ、イーサン問題もあるから」
「………、お前がどうにかしろ」
「無理。とても無理。僕普通の魔術師。あっち脳筋魔術師。無理無理」
「お前が普通というなら、あいつだって普通に入るだろうが」
「フェルゼン、普通って存在しないいんだよ?―――じゃあまたね、カオル、ニーナ。次会うときにはフェルゼンのあんな話を」
「とっとと行け!」
首都に入った途中で、私らはカシェルとトゥルガイと別れた。彼らは家に帰る前にやることがあるのだという。
漫才か、というようなやり取りのあと、「俺の家だから、気にせずくつろげ。敷地内ならば裸足で走っても問題ないからな、カオル」「裸足で走りません」などと笑われた。
フェルゼンの家は首都の郊外にあるらしい。何故かというと、竜がいるからだという。竜にも種類がいるらしいが、フェルゼンの竜は大きい種類だといい、よってかなりの敷地だとか。
首都の高い建物ばかりだったのが徐々に姿を減らし、変わりに木々が姿を見せ始める。
自然が増えはじめてから、何となく理解してきた。
家の敷地内に入る前、立派な門がどーんとある。その前には武装した門番が立ち、「おかえりなさいませ!」と声を張り上げた。そして門が開かれる。
馬車はゆっくり進み、止まる。先に降りたのはフェルゼンである。続けて私とニーナも久々に地面に足をつけると、眩しくて少し目を細める。
というか、これ…。
ニーナと私は、馬車から降りて一言。
「大きい」
「広い…」
邸は、大きい。部屋数かなりあって掃除するの大変だとかメイドさんとかいるんだろうな、とかよくわからない感想が浮かんでは消える。
実はフェルゼンって、かなりの貴族なのだろうか―――なんてこのとき冷や汗もので思った。
フェルゼンだけが「どうした?」と首をかしげる。
―――どうした、って…。