国境となると、かなりの警備となる。要塞、というのかどうかわからないが、いかつい施設をよく見る。

 馬車は見事に止められた。見慣れない格好の兵士が確認するというものだから、私らはまず降りる。
 身分証をカシェルが出した、まではよかった。カシェルに何故か魔術師らしき男がかけよってきて「あの脳き…じゃなくて、トロスウェル卿が」と泣きついているのである。今の脳筋っていいかけたのだが、もしかしてフェルゼンが言っていた素手で魔物を殴る人かな、と疑問。


 とにかくトロスウェルとやらが何かやらかしたらしい。
 
 カシェルがその魔術師の肩を叩きながら「ほら、フェルゼンも帰ってきたし、しばらくはまあ、大丈夫になるからさ」「シャエルサーン卿!」「……俺は知らんぞ」とあきれ顔。



「ご友人なのでしょうか?」

「多分…けど、なんかちょっと脳筋とかいいかけてたよね」



 入国待ちの私とニーナは沈黙。

 何だか怪しい空気(というか人)となったが、無事入国出来た。
 私とニーナについてはカシェルとフェルゼンらが保証しているため、とくになにも言われることはなかった。ほっとした。思わずニーナと顔を見合わせて、笑った。

 日本だと、旅行にいくとしたら様々な交通手段がある。車、電車、船、飛行機。日本は島なので、外国にいく場合は飛行機や船という手段がある。
 昔ならかなり時間がかかったとは聞いたが、今ではあっという間ともいえた。

 この世界は馬車が主流らしいのはもうわかった。ずっと乗っていてお尻が…ともらしたくなるほど。
 あとは、先程見た竜は移動手段としてあるのは聞いた。どんな乗り心地なのだろう?


 スフォルへと入国し、首都へと移動する間、フェルゼンがこの国のことを話してくれる。たまにこちらにカシェルが乗り込み、「凄いでしょ。竜の国だから、建築物も大きいし広い」などと話してくれたりもした。

 確かに街は都会的だった。
 村でさえ、のどかではあるがしっかりとした建物である。キリアールの村よりは立派かな、と思う。


 建物は高いものもあり、かつ道もまた整備してあることが多い。キリアールでは移動の間見てきたが、全然違う。大きい。
 


「壮大な建物ばかりですね…。どうやって建てたのでしょう」

「人と、竜だ。魔術師も関わることが多いな。建材を運んだりするのは、竜のほうが力がある」

「なるほど」



 ヨーロッパの教会とか、そんな建物をイメージしてくれたらいい。私の言葉ではなんといったらいいのかわからないが、ほうっと吐息が漏れる。
 これでは田舎から出てきたら都会的な光景に驚くのと同じだな、と思う。

 何日か馬車は走り続け、ついに首都に入った――――そのとき。