さよならを告げるまで



 人に関しては、ヨーロッパのような顔立ちを想像させる。西洋人、というような感じであり、アジア人の私は顔立ちだと多少目立つかもしれない。いないわけではないだろうが、とフェルゼンの言葉を聞いた。が、あまり見かけないことは確かだという。
 異世界あるある、みたいだなと思う。よくある、黒髪はいない、とかいう物語の設定。

 美桜や翔のようなことを思わなかった、とは言えない自分がいる。特別な何かとか、物語の主人公とか。けれど、物語の主人公のような強さは私にはない。
 物語の主人公って、そもそも何だ。一人一人生きているのだから、その人にとってその人生が既に物語のようなものであろう。
 ……だなんて偉そうなことを思ってるけど、私もあの二人とあまり変わらないのかも知れない。



 
「国境越えて、この国を経由していく予定だ」



 休憩を兼ねて、現在馬車は止まっている。周辺にカシェルの私兵が警戒しながら立っていた。

 広げられているのは地図で、フェルゼンの指が滑っていく。

 地図はもちろんこの世界のもの。世界地図ではないが、キリアールやその近隣、そしてスフォルの国が載っている。国の名前は私にはさっぱりなものばかり。
 その地の上で、フェルゼンが今まで通ってきたところと、通る予定を示している。



「馬車ならまだかかる、か。竜ならもっと早いのだが」

「…そうなんですか?」

「ああ。だがこのキリアール近隣、このあたりはスフォルと違う宗教を持つ。目立つから今回は竜は使えない」




 さらにフェルゼンの指はキリアールから周辺へとのび、説明するそれに合わせる。

 竜には大きさがあるものの、荷物も運べるのだという。が、竜を扱うことが出来る者は決まっているらしい。まだまだ知ることは多そうだ。