それからというものの、ひっそりと国を出る準備をした。

 フェルゼンの友人であるカシェルという人物が私の解放を取り付けたということには言葉が出なかった。そんなにあっさり解放してくれるものだろうか。

 どうやってやったのか聞いたら「脅す、とかいっていたが」という。
 なにそれ怖いという私にフェルゼンは「まあ、大丈夫だろう。あいつのことだから」と信頼しているそれに私も信用しようと思った。


 あとになって、"脅す"の意味はちゃんと理解したが、言い方がなあと苦笑してしまう。
 ばれたらまずいですよね、という言葉事態が実は脅しであったりしているわけだが――そんなことをして大丈夫なのだろうか。そんな疑問は能力のない異世界人の扱いに困っていた側だから妙なことは出来ないだろうといっていた。



 それから―――美桜と翔は旅に出ている。例の、国のあちこちに行くっていうやつだ。
 どこをどう行くかとか、予定は私には伝わっていないのでわからないまま。

 美桜らが旅に出たそのあと、私はここでようやくカシェルに会った。会ってすぐ「やあ。ってことで、脱出しよう」だなんて言われて、ぽかんとした私。ニーナもまた沈黙。フェルゼンだけが「この馬鹿がカシェルだ」と紹介した。

 友人といっていっていたが、フェルゼンの友人にしては少し変わっているという印象だった。実際変わり者らしいが、宮廷魔術師でちゃんとしているから安心していい(フェルゼンの言い方もどうなのか…)と言われ、ちょっと不安になったのは仕方ないじゃないか。



 そして美桜らが出発して、数日後私らもまた馬車に乗りスフォルへと向かっている。

 馬車が豪華なつくりで、ニーナが「あまり揺れなくて快適ですね」というほど。
 確かに馬車ってがたがたするイメージがあったが、と快適すぎてうとうとしてしまう。



「眠いのをおして窓を見ているが、何かあるのか?」
「どんな感じがなと思って。私が知るのはほんの少しのことだから」



 まだここはキリアール王国。私が喚ばれた国だが、親近感とか、寂しいなとかいうのは全くなかった。全てが目新しいものばかり。
 もっとも街なんかを過ぎれば大自然ばかりなのだが。