銀髪に、きりっとした横顔。




「フェルゼンさん!」



 最近は探しても中々会えず、美桜はもどかしかった相手。
 銀髪が振り向いた。

 キリアールのイケメンは、確かにイケメンだが中性的というか、少しだけ弱々しいなと思うこともあった。いかにも貴族だし仕方がないのだが…。



「あの、その…ずっと会いたかったんです。けど中々会えなくて」



 相変わらずフェルゼンは無表情。それをなんとか変えたい。けれどどう攻略したらいいのだろう?


 美桜の回りにいる男はみなイケメンだったが、フェルゼンのような野性味を帯びたタイプはまだいない。だからこそ、欲しかった。
 


「何か用事でも?」

「そうじゃないんですけど…ほら、もう少ししたら旅に出なくちゃならないから。それで」

「それで?」



 薫とは違う。

 旅に出なくてはならない美桜は、薫とは違うのだ。特別。だったらこの人だって。



「まっ」

「……」

「待っててほしいの」

「待ってて、とは?」

「私、旅に出るでしょう?だから、その頑張ってくるから」



 美桜は言葉に詰まった。

 ここにきてから自分が好きだと言わなくても人が寄ってきた。いい気分だった。けれどフェルゼンは違う。彼は薫の護衛から動かない。

 気になった。話したい。それが美桜を動かした。



 どうして貴方は、薫の側から動かないの?
 どうしてなにかいってくれないの。


 私は特別なのに。
 これは、恋だろうか?


 しばらく会えないから、と美桜は勇気を出した。フェルゼンは身長が高い。けれど美桜はヒールのある靴をはいている。だかろこそ、背伸びして頬にキスが出来た。顔を一瞬見る。

 フェルゼンは驚いた顔をしていた。珍しい。



「約束」



 見ていたいし話したいが、と踵を返して走った。


 ――――自分からキスをするだなんて、はじめてだった。